2009年10月12日月曜日

<サイエンスリポート>ゾウリムシを操る

http://www.tokyo-np.co.jp/article/technology/science/CK2009100602000142.html

 「ゾウリムシを操縦してみませんか」。そう勧められて操縦かんを左に倒すと、顕微鏡の視野で数匹のゾウリムシがスーッと左に、右に倒すとゾウリムシも回れ右。「これは面白い」と、好き勝手に動かすと、ゾウリムシもあっちに行ったりこっちに来たり-。ゾウリムシを自在に操る、東京電機大・伊東明俊教授(メカトロニクス工学)の研究室を訪問しました。
 伊東研究室では、単細胞生物のゾウリムシやミドリムシが直径〇・五ミリの小さなプロペラを回したり、プラスチック部品を組み立てたりと、まるで魔法の世界。訪問した私を待ち受けていたとびきりの大道芸は、約三万匹のミドリムシが作る、字体までそっくりな未来館のロゴマーク。でもいったいどうやって?
 「夜、明かりに集まる虫のように、ミドリムシにも光に集まる性質がある。レーザー光で誘導すれば、文字を書かせたり、物体に体当たりさせて動かしたり運んだりできるのです」と伊東教授。先ほど私が体験したゾウリムシ操縦装置は、ゾウリムシがマイナスの電気に向かって泳ぐ性質を利用したもの。このような生物の行動を「走性」といい、光や電気のほかに、化学物質や重力、温度、圧力に対する走性もあるそうです。
 伊東教授は十五年前にこの研究に着手、最近ではミドリムシに直径数十マイクロメートルの銅の玉を運ばせることに成功しました。「将来、ヒトの体内で微生物に薬を運ばせ、がん治療などに役立てたい」といいます。微生物が体内の白血球などに殺されないよう、培養液を含んだカプセル状の防護服の開発が目下の課題です。
 実は、防護服ならぬ作業服なら開発済み。「牛馬に鋤(すき)や鍬(くわ)を取り付けるように、ゾウリムシにプラスチックの輪を装着して物を運びやすくさせました」。でも着心地が悪いのか、ゾウリムシは着るのを嫌がったり、着せてもすぐ脱いだり。このため、今後は特殊な接着剤を使い、化学的に微生物に服をくっつける方法を試す予定です。
 伊東教授のお気に入りはミジンコ。「ゾウリムシは気まぐれで、電場をかけても動かないものがいる。ミジンコはいつも律義に動いてくれる」。ミドリムシは集団と個体ではとる行動が異なり、一匹の時はなぜか光から逃げていくとか。なんだか人間を思わせる個性の微生物。ちなみに私の性格はミジンコ型ですが、読者の皆さんは何型ですか? (山口美佳)

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